業務システムの導入ガイド

案件管理をExcelから移す|項目・状態・担当者の設計

案件管理をExcelから移行するときは、列をそのまま業務アプリの画面へ写す前に、何を1案件と数えるかを決めます。そのうえで、案件担当者を「現在の状態」「次回行動」「次回行動日」の更新責任者に定めます。

同じ顧客への別提案は別案件なのか。商談を重ねるたびに案件を増やすのか。元表の1行が何を表すかを曖昧にしたまま移すと、こうした判断も画面へ持ち越します。案件の単位をそろえた後、顧客情報と対応履歴を分けて関連付けます。

以下は案件の数え方、項目の置き場所、状態と更新責任を決めるための架空の設計例です。実在する顧客の事例や、Cotomuの導入実績・効果を示すものではありません。製品仕様は2026年9月22日に確認しました。データ整理から切り替えまでの全体像は、Excelからシステムへ移行する全体の段取りで確認できます。

案件管理をExcelから移すときの起点は「1案件」の定義

業務アプリで1件として管理するデータをレコードと呼びます。kintoneもレコード単位でデータを管理し、それを構成する項目をフィールドと説明しています(「アプリとは」サイボウズ株式会社)。

Excelの1行を1レコードにすればよいように見えます。けれども、元表の1行が顧客情報と直近の対応内容まで兼ねていたらどうでしょう。同じ会社への異なる提案が上書きされたり、電話や訪問のたびに案件そのものが複製されたりします。

架空の条件例では、同じ顧客であっても「提案対象または契約判断の機会」が異なれば別案件とします。

判断対象架空の条件判定受入条件
顧客が同じ、提案対象も契約判断の機会も同じ既存案件の続きとして扱う同一案件元表の行を既存の案件識別子へ対応付けられる
顧客は同じ、提案対象が異なる提案対象ごとに判断を追う別案件それぞれに異なる案件識別子を付けられる
顧客と提案対象は同じ、契約判断の機会が異なる契約判断の機会ごとに判断を追う別案件それぞれに異なる案件識別子を付けられる
判定材料が足りない推測で統合・分割しない要確認移行前に元表の各行を迷いなく1案件へ対応付けられる

最後の「要確認」を残したまま一括で取り込むと、移行後に案件数と関連履歴を修正する作業が残ります。先に元表の各行へ案件識別子を割り当てられる状態にすることが、この表の合格点です。

1枚の案件表を「顧客・案件・活動履歴」に分ける

1案件の境界が決まっても、会社名や住所を全案件に持たせれば、顧客情報の修正先が増えます。一方、対応内容を案件の1項目へ追記し続ければ、誰がいつ対応したかを1件ずつ扱えません。そこで、元の列を三つの記録単位へ分けます。

Excelの列移行先識別・関連付け必須にする時点判断理由
会社名顧客顧客識別子顧客登録時複数案件で繰り返し使う情報だから
住所顧客顧客識別子業務上必要な場合顧客情報の修正先を1か所にするため
顧客識別子顧客・案件顧客と案件を関連付ける案件登録時同じ顧客に複数案件を持てるようにするため
案件識別子案件・活動履歴案件と活動履歴を関連付ける案件登録時1案件に複数の活動を追加するため
案件名案件案件識別子案件登録時提案対象や契約判断の機会を見分けるため
案件担当者案件案件識別子案件登録時更新責任者を明らかにするため
状態案件案件識別子案件登録時現在地を一覧で判定するため
見込金額案件案件識別子業務上必要な場合案件ごとに持つ情報だから
次回行動案件案件識別子進行中へ移す時次にすることを一覧で判定するため
次回行動日案件案件識別子進行中へ移す時次に動く時点を一覧で判定するため
対応日時活動履歴案件識別子活動登録時個々の対応を分けて残すため
対応者活動履歴案件識別子活動登録時対応した人を活動ごとに残すため
対応内容活動履歴案件識別子活動登録時複数の対応を案件の上書きにしないため

この配分案は、架空条件から導いたものです。製品共通の固定項目ではありません。受入条件は、顧客情報を1か所で直せること、そして1案件に活動履歴を追加しても案件レコードが増えないことです。

分けた記録は、業務で使う画面から参照できる必要があります。kintone公式ヘルプには、顧客管理アプリから条件が一致する活動履歴を一覧表示する例と、顧客ごとに案件情報をまとめて表示する例があります(「関連レコード一覧」サイボウズ株式会社)。識別子で関連付けたあと、必要な画面で関係する記録を参照できるかまで確かめます。

必須項目は「登録時」と「進行時」を分ける

すべてを登録時必須にすると、次回行動がまだ決まっていない案件を登録できません。だからといって任意項目ばかりにすれば、担当者も現在地も分からない案件が残ります。必須にする時点を分けると、この衝突を避けられます。

項目登録時進行中へ移す時一覧で答えたい判断
案件識別子必須候補入力済みどの案件か
顧客識別子必須候補入力済みどの顧客の案件か
案件名必須候補入力済み何の提案・契約判断か
案件担当者必須候補入力済み誰が更新するか
現在の状態必須候補入力済みいまどこにいるか
次回行動未確定を許容必須候補次に何をするか
次回行動日未確定を許容必須候補いつ動くか

受入条件は、一覧を見るだけで担当者、現在地、次にすることを判定できることです。必須条件は、入力欄の充足ではなく、日々の判断に必要な情報の充足で評価します。

状態だけでなく、更新する人と操作を決める

状態の選択肢を作れば進捗管理になるのでしょうか。状態を変える人が決まっていなければ、表示されている現在地が正しいかを誰も引き受けません。

架空の運用条件では、案件担当者を、状態・次回行動・次回行動日の更新責任者とします。担当者の変更時には、この更新責任も新しい案件担当者へ移します。

kintoneのプロセス管理も、処理状況を示す「ステータス」、その状況で作業を任された「作業者」、別の状況へ進める操作である「アクション」を組み合わせます。一つのステータスに複数のアクションを設定でき、フィールド値による実行条件も付けられます(「ステータス、作業者、アクションとは」サイボウズ株式会社)。

この三つを案件管理に置き換えると、状態名に加えて決める対象が見えます。遷移元、操作名、実行者、遷移先、その時点で必要な項目を1行ずつ決めます。

失注・再開を消さない状態遷移表

失注した案件で商談が再開したとき、状態を単に「進行中」へ書き換えると、過去に失注した事実まで消えたように見えます。反対に失注のまま固定すれば、現在地と次回行動が分かりません。過去の記録を保持しながら、現在の状態だけを進める必要があります。

遷移元アクション実行者遷移先遷移時の必須候補保持する記録
登録進行を開始案件担当者進行中次回行動、次回行動日案件識別子、顧客識別子
進行中失注にする案件担当者失注今回の失注理由、失注日時過去の失注を含む状態変更履歴と活動履歴
失注再開案件担当者進行中再開日時、次回行動、次回行動日過去の失注理由、失注日時、再開の履歴

「再開」の扱いも、1案件の定義に従います。提案対象と契約判断の機会がどちらも以前と同じなら、架空条件では同じ案件を進行中へ戻します。それらが異なるなら別案件です。再開という言葉だけで同一案件かどうかを決めないことが重要です。

同じ案件が再開後に再び失注した場合も、前の失注日や理由を上書きしません。現在の状態は案件に持たせ、状態変更は案件ID、変更前後の状態、日時、理由、操作者を一件ずつ履歴へ追加します。

架空案件P-Aの操作現在の状態追加する履歴
失注にする失注進行中→失注、今回の日時・理由・操作者
同じ提案を再開する進行中失注→進行中、再開日時・理由・操作者
再び失注にする失注進行中→失注、新たな日時・理由・操作者。初回の失注履歴は保持

月別の「失注案件数」なら、対象月の失注履歴を抽出し、案件IDの重複を除いて数えます。「失注回数」なら、その月の失注履歴の行を数えます。現在の状態が失注の案件数とも異なるため、集計名にどの数え方かを明記します。

受入時は同じ案件で失注・再開・再失注を実行し、初回の理由と日時が残ること、現在地と次回行動が更新されることを確かめます。この履歴保存と集計は独自の設計案です。kintoneの標準機能だけで希望する集計までできるかは、別に確認します。

移行前に合意する判定項目

  • 元表の各行を、迷いなく一つの案件識別子へ対応付けられるか
  • 同じ顧客でも、提案対象または契約判断の機会が異なる場合を別案件にできるか
  • 会社名・住所を顧客、案件名・担当者・状態・見込金額・次回行動を案件、対応日時・対応者・対応内容を活動履歴へ配分できるか
  • 顧客情報を1か所で直し、案件を重複させずに複数の活動履歴を追加できるか
  • 登録時と進行中へ移す時で、必須にする項目を分けられるか
  • 案件担当者が、状態・次回行動・次回行動日の更新責任を持つか
  • 再失注しても過去の状態変更履歴が残り、失注案件数・失注回数・現在失注中の案件数を区別できるか
  • 各状態の遷移元、操作、実行者、遷移先、必須項目に空欄がないか

この判定を満たしてから、画面や製品を選びます。選択肢の違いを整理する場合は、SaaS・kintone・スクラッチ開発の比較も判断材料になります。

移行前の案件表で、同じ顧客の別提案と、失注後に再開した案件を確認します。それぞれに案件識別子を割り当て、担当者が状態と次回行動を更新できるかを試すと、項目表だけでは見落とした運用の違いを確認できます。

自社業務に合わせたWebアプリを検討する場合、Cotomuでは受発注、申請承認、作業報告など、困っている業務ひとつから相談できます。初期開発と運用保守は個別見積もりで、連携・移行・権限・データ出力の範囲は契約前の確認事項です。業務アプリの相談から、現在の案件表と判断条件を共有してください。

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